- 2005年10月5日
- 謝るのも仕事のうち?
ある会社が不渡りを出した。
会社には債権者が押し寄せるけれど、会社はもぬけの殻。
とりあえず、「こちらで代理をしております。ご連絡がある方は、こちらまで・・・。」という趣旨で、私たち弁護士の名前が書かれた貼り紙を貼っておく。
かくして、貼り紙をしてから何日間は、電話は鳴りっぱなし。困っている人からも、怒っている人からも電話がかかりまくってくる。
「詐欺で訴えるぞ!いいな!」と息巻く人には、「こちらが訴えちゃダメだと言える立場ではありませんからね。然るべき方にご相談して法的手段をとられるのであれば、そうしていただくしかありません・・・。」
「金は返してもらえるのか!」と言う人には、「みなさんがそうおっしゃるんです。でも、現状では破産するお金もなくて・・・」。
最後は、ひたすら「ご迷惑をおかけします・・・。申し訳ございません。」と謝り続ける。
仕事を始めて間もない頃は、「なぁんで私が謝らなくちゃいけないのよっ!」ぐらいのことを思っていたけれど、今となれば、「謝るのも仕事なんだし、いくらだって謝ったるわい!」ってな感じで、ひたすら謝り倒している。
債権者は、最終的には社長本人に対して怒っているのだから、私などが謝ったからといって、何がどう解決するわけでもない。
しかし、怒りの矛先を受け止める所があるのとないのでは、大分状況が変わってくる。
もし、何かに怒っていても、その怒りをとりあえずぶつける相手がいれば、鬱憤をはらすことができるかもしれない。少なくとも、精神的には、怒りを増幅させずに済むかもしれない。
実は、私は、テコンドーの道場に通っているのだけれど、その稽古で、ミットを蹴る練習をやっていて、ふと、「なんだか私ってキックミットみたい・・・。」と感じて、ちょっと悲しくなってしまった。
しかし、うなれば、なるべくフカフカとクッションのきいたミットになって、怒りのキックやパンチが後を引かないように、今日も謝り倒すのだ。
カテゴリー:弁護士・法律の話