日々の歩み

2005年10月7日
法律のできること

 離婚した弁護士が、親権者の相手に引き取られた自分の子供を誘拐した、として、逮捕された、というニュースがありました。

 この方は、子供に会わせてもらうための裁判手続き(家庭裁判所での面接交渉の調停でしょう)をとっていて、そのために、相手と子供の住む土地の裁判所に出向いたとき、子供の学校から子供を連れ去ったそうです。

 離婚して夫婦ではなくなっても、子供にとっては母親であって父親。だから、法律上は、同居していない親にも、子供に会わせてもらうようもとめる権利、つまり面接交渉権がある、ということになっています。

 ところが、実際に、自分の手元に子供をおいて育てている方の親は、離婚相手に子供を会わせようとはしない、ということは良くあります。

 そのようなとき、たとえば、裁判所で「子供に会わせなさい。」という審判がおりたとしても、相手がそれを無視した場合、それを強制する手続きがありません。

 そういうとき、会いたい子供に会えない親がとる手段は、陰からそっと見守るか、あるいは言葉は悪いですが、実力行使、ということになってしまいます。

 ともすれば、実効性のない面接交渉権を実効化するために、運動をしている方々は大勢いらっしゃいます。
 しかし、実際問題として、子供を離婚したもう一方の親に会わせることを裁判所が強制する、というのが、妥当な手段である、と言えるのか、やはり疑問を持たざるを得ません。今の段階では、それは、「法律のできること」にはまだ至っていないのではないか、と思うのです。

 まず、そうなってしまった場合に、お互いが納得して子供に会わせられるような方法は何なのか。その方法を現実化する社会システムがまずできることが第一で、そのうえで、ようやく法律の出番、ということになるのでしょう。

 そのシステムについては、また考えてみようと思います。

カテゴリー:弁護士・法律の話