日々の歩み

2006年1月29日
住所は公園です

 大阪の公園で生活をしている人が、公園への住民登録を認めない区役所に対して訴訟を起こしていた事件で、第1審判決は、「公園に客観的に住所としての実体を備えている」として、住民登録を認めないとした役所の決定を、違法と判断したそうです。

 つまり、この男性の場合、テントなどがあって、そこで食事等をしているなど、生活の基盤があると客観的に認められる、ということが、住所として認定された理由だとか。

 対する区は、この男性が公園に居住すること自体の適法性を問題にしたようですが、そのことと、住居としての実体とは、別個に判断をしたようですね。

 さて、大学では、民法の総則も履修したのですが、使用した教科書は四宮和夫先生の民法総則、条文の順番に従って記載されています。

 民法は、全部で1000条あまり、うち、総則は第1条から第174条の2まで。
 そして、住所について定めているのは第21条。

 こうして、大学の講義でも、住所については比較的早い時期に講義が行われるのですが、たった数条の、「住所」「居所」「仮住所」などという規定に、1日費やされて授業をやった覚えがあります。

 「住所1つに、法律って大変なことなのね・・・」と、初学者だった私は思ったわけなのです。

 要するに、法律には「各人の生活の本拠が住所である」と定められているだけなので、では「本拠」とはいったい何か? という議論が、延々と続くことになるのです。

(このように丁寧に進んでいった大学の授業では、もちろん1年間でそのカリキュラムを最後まで終わることはありませんでしたが、とにかく大学の法学部の試験は、司法試験よりもずっと難しかった・・・。そのことだけははっきりと覚えています)。

 さて、このようにみっちりと勉強した住所地ですが、実務を始めて1番気にしなくてはならないのは、裁判をどこで起こすかという管轄の問題、そしてどこに裁判書類などを送達するかという問題、これらの場面になるのでしょう。

 ところで、先ほど出てきた「居所」ですが、こちらの条文の内容は、こんな感じです。

 「住所がわからない場合は、居所が住所であるとみなされる。」

 「居所」っていったい何なのか、全く説明はありません(笑)。言ってみれば、「居場所ではあるけれど、生活の本拠地ではない場所」ということになるのでしょう。

 司法試験の勉強を始めるとき、前から順番にやっていくと、こういうところ1つ1つで結構つまずいたり、逆に面白い(=可笑しい)なあ、と感じたりするものなのです。

 そんなことをふと思い出した判決でした。

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