日々の歩み

2014年3月14日
調停に弁護士は必要?~その2

さて、前回の続きです。
調停は、自分一人でも利用することができる手続ですが、それでは、調停の段階から弁護士に依頼した方が良いのはどういう場合なのでしょうか?
ここでは、調停の前に、インターネットで調べたり、弁護士に法律相談をしたりして、一応、「調停ではどういうことを決めるのか。」、「調停はどういう進み方をするのか。」、ひととおりわかった人の場合、を前提にして、「それでもなお、弁護士に頼んだ方が良い場合。」ということで考えたいと思います。
1 平日の昼間、裁判所に行く時間がない人
裁判所の調停は、平日の昼間、普通は午前中なら10時から、午後なら1時から、あるいは3時から始まるのが通常で、土日祝日はやっていません。
なので、まずシンプルに、平日の昼間に仕事を休めない、平日の昼間に裁判所に行く時間がとれない人は、調停の段階から弁護士を依頼する必要が出てきます。
2 調停の席上以外でも、相手と連絡を取る必要があるけれど、自分で連絡をとりたくない人、 自分の連絡先を知られたくない人

調停の席上では、調停委員を間にはさんでのやりとりになるので、相手方と直接やりとりをする必要は原則としてありません。
ただ、調停と関係することで、日々の連絡など、調停以外の場でも相手と連絡をとらないといけない場合は多々あります。
そういうときに、弁護士が代理人でついていれば、自分は一切連絡を受けることも、することもなく、弁護士に連絡窓口になってもらうことができます。
少し大変なことをお願いしない限り(たとえば、相手の荷物を取りに行くのに立ち会って欲しい・・・など)は、特別な日当などは発生しないことが多いのではないかと思います。
これは、弁護士を頼むと意外に便利なことの一つだと思います(気も楽になります。)。
3 知識面で不安を感じるタイプの人
ひととおり、調停で何をやるか、何を決めるか、法律相談やインターネットで知識は得たけれど、いまひとつ不安な場合は、弁護士を頼んだ方が良いことも多いです。
調停の席上では、大事な決断を迫られることが多く、また一度決断して調停が成立してしまうと、その内容をくつがえすことはなかなか困難なことが多いのです。なので、間違った知識で決断をすることは避けたいものです。
ただ、このタイプの場合、大事な決断は「一度持ち帰って、次回までに決める。」ということができます。
ですから、必ずしも弁護士に頼まなくても、次回までの間に、再度、弁護士のところに法律相談に行って、自信を持って期日に臨む、というやり方は十分可能だと思います。
4 自分の決断力に自信がないタイプの人
こちらも、2とほとんど同じことが言えます。
このタイプの人も、期日の間に弁護士に相談に行くことで、明確な決断を持って期日に臨むことは可能だと思います。
5 他人に流されやすい、気が弱い、人が好過ぎる等、「NOと言えない私」の場合
裁判所の調停委員は、「公平な第三者」ということなのですが、調停委員も人間ですし、また、自分が関与した調停を、「できればうまくまとめたい!」、という気概を持ってお仕事をしています。
調停とは、本来、両方の当事者が「お互いに譲り合って」解決を図るものです。
ところが、人に流されやすかったり、人の言うことにNOと言えないタイプの人は、調停委員が真剣に説得してきた場合、本意ではないけれども、それに従ってしまうことはあります。調停委員も人の子ですから、説得に乗ってくれやすい人を説得してしまう、というのが世の常です。
結果的にそれで良い場合もあるのですが、そうでない場合も多々あるのが現実です。
知識では申し分なかったり、論理的に物事が考えられたり、とても知的レベルの高い方でも、本意ではない調停に応じてしまって、損をしたりすることがあるのは、概してこのタイプ。
私の考えでは、こういう人こそ、できれば弁護士を依頼していただきたいな、と思います。
(あ、でも、そういうご自身の性格が嫌いではなく、損をすることもきちんと受け入れられる人であれば、問題はないと思います。念のため・・・。)
6 感情を押さえるのが苦手な人
調停に行くと、多かれ少なかれ、頭に来ることが非常に多く、感情をコントロールするのが難しい局面が出てきます。
そういう場合に、待合室でのイライラは相当程度のものになりるので、感情をぶつける(?)相手がいた方が良い場合が多いのです。
また、感情的になると、冷静な判断ができにくくなるので、感情が高ぶった現場で、すぐに話相手となる弁護士がいて、クールダウンする方向での話をしてくれることは、メリットだと思います。
7 精神的に不安定になりがちな人
これは6とも似ていますが、自分のことで裁判所に行ったりすることは、それ自体が非常にゆうううつなことであって、精神的に不安定になったり、中には、体調を崩したり、心療内科や精神科へ通院しなければならない人がかなり多いのです。
そういう場合、やはり自分だけで事件をかかえることが難しく、弁護士に同行してもらったり、ときには弁護士だけに出席してもらったり・・・ということが臨機応変にできる体制がある方が、安心です。
8 作戦を立てて調停に臨みたい人
調停なのだから、素直に、公平な第三者の調停委員をはさんで、自分の意見をしっかり言えれば良い、と思いませんか?
「最終的にこうしたい!」と思ったから、それを素直にはっきりと最初から調停委員に伝えれば良い。」という考え方です。
たとえば、しかし、実はそれが必ずしも得策ではない場合もあります。「実はこうしたい」けれど、初めからそのような話を調停委員にはしない、ということ、つまり「段階を経て作戦を立てる。」ということは、実は良くあります。
もちろん、法律相談に来ていただければ、そういうお話もさせてもらっています。
ただ、それを調停の場で実際に伝えるのが結構難しかったりするので、最初のうちは自分で調停をしているけれど、途中から、「やはりお願いします。」と言われる、ということも結構あるのです。
・・・以上、こんな感じでまとめてみました。
あ、最後に大切なことです。
9 費用がかかることに納得できる人
弁護士に頼む以上、どうしてもお金がかかりますので、これははずせません。
ただ、今までにまとめたパターンの場合は、結果的に費用をかけても弁護士を頼むメリットはあると思っています。
弁護士によっも費用はいろいろですので、もし法律相談をされることがあったら、「調停をして、終わるまでに全部でだいたいいくらかかるのか?」、聞くだけならタダですから、ちゃんと見積もりをしてもらうのがおすすめです。
ちなみに、弁護士を頼みたいけれど先立つものがない場合・・・。
収入などの条件面が合えば「法テラス」での弁護士費用の立て替えなどの支援制度を利用することができる場合もありますので、気になる人は、それも調べてみると良いと思います。

カテゴリー:弁護士・法律の話