日々の歩み

2005年9月15日
名前を黙秘したら?

逮捕されてしまったとき、「当番弁護士」という制度があって、無料で1回は弁護士に接見することができる。

 私の友達の弁護士が、当番弁護士の日、出動要請があって、さっそく被疑者が勾留されている都内の○○警察署へ出かけた

 警察署の受付で、友達が、「勾留されている○田×男の接見に来ました。」と言うと、警察官は、「そんな人は勾留されていない。」とつれない返事。
 警察署を間違えたのか、とあせった友達は、「そんなはずないんですが・・・。こうこうこういうこと(と犯罪の概要を説明)をして、逮捕されたらしいんですけれど。」と説明をした。

 すると、警察官は、「ああ、○○(=警察署の名前)1号のことね。名前まで黙秘してるから、名前、わかんないんですよ。」と言ったそう。
 
 ってことは、池袋警察署で名前を黙秘したら、「池袋1号」、原宿警察署で名前を黙秘したら、「原宿1号」、2人目は「原宿2号」って呼ばれる・・・らしい。

 ところが、実際に友人が接見してみると、その被疑者、取調のときにふてくされて黙っていたら、刑事に「なんだ、黙秘か!」と言われ、思わず、「そうだ!」と答え、行きがかり上、意地でも後には引けなくなってしまっただけのことだった。

 ところで、なぜ、当番弁護士の友人には、その被疑者の名前がわかったかと言えば、その友人は、裁判所から、当番弁護士の出動要請を受けたからだった。

 裁判所で行われる勾留質問(逮捕の後、勾留をすることの適否を裁判所で判断するために行われる手続き)に出向いた被疑者に対して、裁判官は、「あんた、黙秘なんだってな?」などとすごんだりしない。
 ごく紳士的に、「お名前は?」と聞いてくれたので、その被疑者、「はい、○田×男です。」と、やっと素直に答えることができた。

 自分の意志で黙秘を続けるのはとても難しいけれど、自分の意志に反して、したくもない黙秘を意地で続けるのは、もっとずっと辛かったことだろう。
 だから、その被疑者は、裁判官から「お名前は?」って聞いてもらえて、本当に、本当に、うれしかったに違いない。

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