日々の歩み

2016年4月1日
離婚裁判における尋問の意味

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 桜が盛りの春の日ですが、桜の時期は短いもの。出会いと別れのシーズンでしょうか?
朝、テレビをつけたら三船美佳さんが、突然の和解離婚、という話題が飛び込んできました。
 会見によると、和解による離婚を申し出たのは夫の高橋ショージさんの方で、美佳さんの方がびっくりした、というニュアンスでした。
 会見を見た限りでは、すでに裁判が始まって1年、そろそろ離婚原因(モラスハラスメント?)等の立証のために、本人尋問が予定されていたはずです。美佳さんの側は、相当やる気で準備していた様子・・・。
 そうなると、傍聴したマスコミに騒がれるのは必至なので、おそらくはそうなる前に円満解決、という選択を夫側がして、それを妻側も受け入れた感じですね。
 離婚を望まない夫は、とことん離婚を争い、裁判で勝訴して、離婚にはならなかったとしても、結局、元のさやにおさまる希望があまりなく、それなのに尋問の内容などがまた大きく報道されることは、あまりにデメリットが大きすぎる、という判断なのでしょう。良く理解できます。
 世間の評判がとても重要で、騒がれたりする有名人ではなくとも、離婚裁判は、普通の裁判と同じように、傍聴人もいますし、何よりも、もめている夫婦が顔を突き合わせて、弁護士や裁判官の尋問にさらされる、というのは大きなストレスになる場合がほとんどです。
 そのため、判決を求めるために尋問までやるよりは、長い目で見た場合に、いずれは離婚になる可能性が高いということを事実として受け止め、尋問は避け、条件闘争をして和解で離婚をする、というのは、非常に多い選択肢ですし、その気持ちは本当に良く理解できます。
 一方で、どうしても尋問までして判決を求めたい、という当事者の方も少なからずいらっしゃいます。
 これは、絶対に離婚をしたくないという意思が一方の当事者にある場合、あるいは、離婚について、本当のところはやむを得ないと思っていても、自分に非はない、自分の主張したいことはきちんとしたい、という強い気持ちがある場合・・・
 等でしょうか。
 そういう気持ちがあれば、その目的達成のために、尋問をやることは必要になってきます。尋問の目的は、自分の主張することを証拠として裁判所に認めてもらうこと、にありますから。
 ただ、尋問をやることには、それ以外の意味もあると思っています。
 尋問をする場合、前準備として、当事者の陳述書を提出することがほとんどです。そこには、弁護士が作成する法的な意味を持つ準備書面等には織り込めない細かい事実関係や、感情的な部分の記載が多くなされます。
 そのうえで尋問のための打ち合わせやリハーサルをし、そして尋問に望む。
 裁判所での尋問は、時間的にはそんなに長いことはないのですが(普通、1時間以内で終わることがほとんどです)、そこに至るまではそれなりの時間をかけて準備をしていきますので、そのプロセスにおいて心の中の感情が整理できる方が少なからずいるように思うのです。
 なぜなら、
 このプロセス自体、裁判も後半になってのことで、時間がかなり経過している。

 自分の思いを文章にする(もちろん、文章自体は弁護士が書くことがほとんどですが、そのためには詳細な聞き取りをします)ことで感情の整理ができる。
 それまでは、主に自分と自分の弁護士の間の打ち合わせ、という形で行われていたものが、相手方の弁護士や裁判官に自分自身をさらし、自分の味方ではない人物からの尋問を想定することから、より、戦略的にものを考えなくてはならなくなり、自分の置かれた立場を客観視する必要ができる。
 そういう機会のように思うのです。私はそういう位置づけで準備することが多いです。
 そもそも、尋問まで行く裁判は、対立が大きくて判決で解決されることが前提の場合がほとんどなのですが、「絶対に離婚は望まない!」 と言っていた方が、尋問が終わった後で、突然、離婚をすることに気持ちが動いたりして、和解になって終わることもありました。
 これは、離婚の裁判に限ったことではないのですが、特に離婚の裁判では尋問の前、と尋問の後、が和解のタイミング、と巷で言われるのも、そういうことなのだと思います。
 まあ、私個人としては、尋問は、ご本人にとって精神的負担が大きいことがわかっているので、積極的にお勧めはしているわけではなく、ご本人がどういう方かを踏まえ、良く相談して方針を決めるようにしています。
 離婚以外でも、訴訟のパターンは、ほぼ次の3つのパターン。
・尋問しないで和解
・尋問した後に和解
・尋問をして判決
 どのパターンに落ち着くか、は、当事者の方ご本人の性格、そして、自分にとって何を優先事項とするか、に大きく左右されるところだと思っていますので。

 今回話題になったご夫婦の場合には、高橋さんサイドの優先事項(これ以上マスコミでモラハラについて取り上げられたり、騒がれたくない?)が尋問前の和解を決意させ、それが、お金よりも離婚と親権を優先事項とする三船さん側の利害と一致したために、尋問前の和解に落ち着いた、ということになったのでしょう。

カテゴリー:離婚