日々の歩み

2006年6月24日
弁護士今昔ものがたり

 私が以前に勤務していた弁護士のボスは、すでに弁護士生活40周年を迎えるベテランです。

 法律事務所にパソコン(ワープロ)、コピー機、ファックスはあたりまえ、の時代ですが、さて40年前はいったいどんな感じだったのか? 全く想像もつかないものです。

 「先生が弁護士になられた頃、裁判ってどんな感じだったんですか?」

 何度か、折に触れて聞いてみたことがあります。

 まずワープロがないので、書面は当然手書き、でも和文タイプライターを購入して奥様がそれを一生懸命打っていたりしたそう。

 裁判所の判決文も、やはり手書きのものを和文タイプで打っていたのだそうです。だから裁判所にはタイピストの方がいらっしゃいました。

 ファックスはないから、やはり郵送か直接持参、これは少し前までそうでした。
 ファックスでの書面送付が認められるようになったのは、私が弁護士になってまもなくのこと。

 何より「ビックリ」だったのが、今は当たり前のように証拠を「コピー」して、正本と副本を何通も作ったりするのですが、昔はこれも「青焼コピー」(これはまだわかる)だったり、「手書きコピー」(??)だったりしたのだそうです。

 つまり、約束手形を証拠で提出するとすれば、それを手書きで真似して書いて、それを証拠として出したのだそうです!! 

 こうして考えると、パソコンやコピーの発達に伴って、提出される証拠の量も、書面の枚数も、格段に多くなったに違いありません!

 私などは、ワープロの方が書くスピードが断然速く(そういう方が多いと思います)、手書きで書面を書くことなど、とても考えられません。

 しかし、前の事務所のボスを初め、ベテランの先生方の中には、やはり慣れ親しんだ手書きの方が良い、という方も多いようです。

 でも考えてみれば、私が弁護士になった頃は、パソコンもようやく普及し始めた頃、eメールも使っていない人の方がまだまだ多かったのです。

 こうして、法律事務所の業務も、あたりまえのようにハイテク化して、もはや手書きの書面にお目にかかることはできず(1度だけ、手書の書面を出した弁護士とあたったことがありますが!)後戻りすることは、もはやないのでしょう。

 何よりも、インターネットで豊富に得られる情報、そして法律情報のデータベースだけは絶対に手放すことはできません。

 しかし、「ペーパーレス」だけは、なかなか実現不可能。パソコン等の発達によってペーパーレスになる、と叫ばれて久しいのですが、こればかりは逆。パソコンで、書面も必然的に長くなり、コピーで証拠もじゃんじゃん作れてしまうので、以前にもまして紙の消費量は増えているように思うのです。

 そう考えると、裁判書類がB4からA4に統一されたことが、唯一、エコロジカルな出来事だったのかも……。