日々の歩み

2006年2月10日
警察官の涙

 民事裁判でも刑事裁判でも、証人尋問を開始する前には、「嘘偽りを述べない」という宣誓をします。

 宣誓のときは、当事者も、傍聴人も裁判官もみなで立ち上がり、少し頭を垂れてその宣誓を聞きます。裁判が厳粛に感じられるひと時です。

 こうして始まる証人尋問(本人の場合は本人尋問ですね)、相対立当事者からは、全く反対の証言が出てくることは、ごくあたりまえ。

 真実が1つしかない、とすれば、明らかにどちらかが嘘をついている、ということ。

 ところが、本人にとっては、はたから見て事実とは異なっていたとしても、自分の記憶の中では、すでにそれが真実になっていること、があったりして、あながち「嘘をついている」とも言いがたい場面もあるように思います。

 さて、私が目にした刑事裁判。

 証人に立ったのは、警察官でした。警察官に対して暴行をした、という公務執行妨害罪の被告人の事案だったはず。その警察官は、暴行の現場に居合わせたということで証人申請されたのでした。

 警察官が刑事裁判の証人に立つことは良くありますが、その日の警察官の方の証言の様子は、少し違っていました。

 弁護人からの質問に対して最初のうちに冷静に答えていたのですが、弁護人からの突っ込みが入るにつれて、少しずつ冷静さを失い、最後の方は、涙目、涙声になって証言を終えたのです。

 あまりに見慣れない場面だったので、その事件を見学していた私は、裁判官の方に「泣いてましたね・・・。」と言うと、あっさりと「ああ、嘘ついてるからだろうね。」との返事。

 証人になった警察官が半泣き状態になりながら被告人に不利な証言をしたわけですから、そのように思うのも当然といえば当然です。

 その裁判がどういう結果になったのかは、残念ながら見ることができず・・・。

 泣きながら証言をしたのは「嘘をついているからだろう。」と内心思っても、そのことを判決に反映するのはとても悩ましいところです。
 でも、嘘の証言をしているという心証を抱いたのであれば、その心証は、他の明らかな証拠を拾っていくうえで影響を及ぼすはず。

 たとえば、立場上、どうしても偽証をせざるを得ない人・・・・いるかもしれません。

 そんな場合、ポーカーフェイスで嘘をつくのではなく、言葉とは裏腹の態度で真実を示す・・・。そんなこともできそうです。

 ドラマのようですね。

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