日々の歩み

2010年3月31日
弁護士としてのアドバイス

 割と最近のこと、アメリカを始めとする各国が、日本の外務省に対して、「国際的な子の奪取に関するハーグ条約」への加盟を要求した、という記事が出ました。
アメリカ大使館のサイト
 この条約に加盟している国同士であれば、国際的な子の連れ去りがあったとしても、連れ去られた国に対して子の引渡しを請求できるのですが、日本はこれに加盟していません。
 たとえば、日本人の妻とアメリカ人の夫の間に子供がいてアメリカに住んでいたけれど、離婚した場合、日本人の妻が子供を一方的に日本に連れて帰ってしまうと、アメリカ人の夫は、実質的に子供に会うことができなくなってしまう、ということになります。
 理屈で考えれば、非常に理不尽な話、ということになります。そのため、国際的には日本は「悪者」のような論調で非難されているわけです。
 実は、このようなことに関して外国から相談を受ける、ということが結構あって、外国から子供を日本に連れて帰ってしまって問題はないのか、と聞かれることがあります。
 厳密に言えば、それは「問題」になります。
 でも、こういう場合、本人が助けを求めているのに答える弁護士として「それは問題だから、やってはいけません!!」と断言してしまえるか、というと、やはりそうばかりは言ってはいられない、ということになります。
 相談してくる本人の利益を考えると、最終的に日本で子供と一緒に暮らせる、という既成の事実があることが、その後、本人にとっては一番利益になる場合が多いからです。
 同じように、別居中の夫婦間での子供の奪い合いの場合、「自分のところに連れてきてしまっても良いですか?」と聞かれることがあります。
 このときも、やはり「良いですよ。」とは答えられません。
 すると、それで相談は終わってしまうのですが、そういうわけにもいかなかったりします。
 考えてみれば、不貞行為の証拠集めなどというのは、ほとんどが相手のプライバシー権を侵害していることになります。
 しかし、裁判では、そのようにして得られた証拠をもとにして闘わなければならないわけです。
 とすると、弁護士としては、相手方のプライバシーを侵害しなさい、とおおっぴらには言えないものの、やはりそういう証拠は欲しい…、ということになるのです。
 そういうとき、いったいどういうアドバイスをするのか…。
 何でも四角四面に適法に動こうとすると、逆に本人の利益を害してしまう、ということがある。そうすると、もう少し踏み込んだアドバイスが必要になってきます。
 しかし、「踏み込んだアドバイス」というのは、やはり弁護士と依頼者本人との信頼関係が必要になります。
 そして、そのアドバイスが、奥歯に物のはさまった言い方になってしまったりすることも…。
 日々、そんなことを考えながら、相談をさせていただいています。