日々の歩み

2009年12月25日
グレイ・クリスマス(@俳優座)

 先日、お世話になっている方より、「俳優座で今やっている『グレイ・クリスマス』というお芝居がとても良いので、ぜひ、見に行ってみてください!」と勧めていただきました。
 俳優座劇場は、六本木駅からうちの事務所へ来る通り道にあります。
 仕事の日には毎日その前を通っていたのに、一度も足を運んだことはありませんでした。
 脚本は、斉藤憐さん、「上海バンスキング」等で有名な脚本家の方、主演女優は三田和代さん、作家の三田誠広さんのお姉さんです。
 お話の内容は、戦後まもなく、GHQによって自宅の屋敷を接収された伯爵家が舞台となって、朝鮮戦争が始まるまでの数年間の毎年のクリスマスの様子が描かれます。
 この話のモチーフになっているのが、GHQによる憲法の草案です。
 この草案を作成する、日系人のGHQの将校と、将校相手のパーティーでホステス役をすることとなった伯爵夫人が恋に落ちるのです。
 でも、これを見ていて私が思ったのは、伯爵夫人が本当に恋をしていたのは、この日系人のGHQの将校そのものではなくて、この将校が日本で根付かせようとした、「新しい憲法の理念そのもの」だったような感じがするのでした。
(以下、ネタバレが少しありますが…)
 伯爵夫人は、日系人将校に、一緒にアメリカに連れていって欲しい、とせがみます。なぜなら、伯爵夫人にとって、アメリカは、素晴らしい憲法を日本にもたらしてくれる、素晴らしい国、だから。
 でも、将校は、「あなたをアメリカへは連れて行けない。アメリカは、あなたの思うような素晴らしい国ではないから。」と言うのです。
 このお芝居は、今から数十年前に書かれたものだそうなのだけど、今見ても、全然古臭さを感じません。
 また、私が憲法に一番触れていたのは、司法試験の受験生だった頃で、実際に弁護士になってから、憲法を改めて見直したことはありませんでした。
 このお芝居は、台詞の中に、憲法の前文、条文がふんだんに出てきます。
 美しい理念を体現した言葉だったので、はっとしました。改めて、仕事をするうえの背骨なのだ、ということに気づいた感じです。
 自分の趣味だけだったら見過ごしていたお芝居ですが、こういう出会いをさせていただいたこと、本当に感謝しています。

カテゴリー:ブログ