日々の歩み

2007年6月16日
懲罰的損害賠償の国と労働法

 先日、私用兼仕事にて、アメリカ(ニューヨーク)→カナダ(ケベックシティ)と出かけてきました。

 ニューヨークには何度も出かけていますが、大人数で行ったのは今回が初めて。
 
 人数が多い分、いろいろと旅先でもハプニングに遭遇するわけですが、ヨーロッパの人以上にアメリカの人は謝らないね、という話で盛り上がって帰ってきました。

 まずは、飛行機の中でジュースがもらえないまま待たされたよその乗客がクレームをつけると、フライトアテンダント(女性)は、「この席を担当していた彼(やはりフライトアテンダント)が忘れたのよ。全く、彼に言っておくから! ハッハッハ!」と高笑いして、思い切り乗客の機嫌を損ねていました(汗)。

 荷物のことでクレームをつけても言い訳ばかり。

 一緒に出かけた仲間内で英語が比較的できるメンバーであれこれクレームをつけても、のらりくらりと言い訳をするのですが、あまりの応対の悪さに頭にきた一人(=正義感強い)が、非常に怒って日本語でまくしたてると、その迫力に押されたのか、突然「ごめんなさい!」を連発しだしたり。

 テロの影響で、やたらと入国審査も念入りなのですが、「全く! 世界で1番危険な国の人間が、安全なわれわれ日本人を審査しやがって!」とブツブツ言う人もいたりする始末・・・。

 という長い前置きになりましたが、やはりアメリカには懲罰的損害賠償というのもあったりして、「不用意にあやまると賠償金がはねあがるから。」などというせりふをアメリカのドラマや映画などで耳にすることもあります。

 開拓精神旺盛でピストルなしの社会にはならないお国柄、ということもあるのですが、そのような法制度も国民性を形成する風土になっているのだと思います。

 そういう話を耳にしてか、法律相談の来られた方でも「謝ると、後で不利になるのではないですか。賠償金があがるって聞くんですが。」なんていう質問をされる場合もあります。

 時と場合によるわけですが、日本の場合だと、謝らなければならない場合には謝るけれども、それと金額は必ずしもリンクしていない、という感じでしょう。

 もちろん、謝ってしまってはあとで不利になる場合もありますが。

 最近、日本でも懲罰的損害賠償を法制度に取り入れよう、という動きもあるようですが、これも、ロースクールなどに引き続き、アメリカからの要請が強いのでしょう。

 契約法でまかなえない部分を不法行為が一気に引き受け、その範囲がどんどん拡大している、というのがアメリカの現状ではないか、と思うです。

 そして、その方向性は、自分と他人の責任の範囲のバランスが失われていく、という弊害があるので、慎重にならないといけないと思います。

 ただし、懲罰的損害賠償ではないのですが、日本の法制度で、これに近いもので、あってありがたいものは、「労働基準法上の付加金」の制度です。

 先だって、未払賃金の裁判で、付加金もかなり多くつけた勝訴判決を得ました。

 これは、実際に支払うべき金額と同額分の範囲内で、労働者に対して支払わなければならない、というものです。

 懲罰的、というよりは、「付加金を払うくらいなら、ちゃんとお給料を払いなさいよ。」という意味合いが強いものですが、使用者と被用者の責任を考えても、とてもバランスのとれた法律なのではないかな、と思っています。